この記事でわかること
- 医師の所得税率と不動産投資の節税の仕組み
- 減価償却・損益通算を使った具体的な節税額の計算
- 「節税になる」という営業トークの裏に潜むリスク
- 節税を最大化するための正しい順番と考え方
研修医の Dr.ぽちです。
「先生は税率が高いから、不動産投資で節税できますよ」
医師をターゲットにした不動産営業の常套句です。私のもとにも何度もかかってきました。
この言葉、半分は本当で、半分は罠です。
確かに医師は税率が高いため、節税効果が大きくなる構造があります。しかし「節税になるから買うべき」という論理には、見落としてはいけないリスクが隠れています。
この記事では、医師の実際の税率から逆算して、不動産投資の節税効果を具体的な数字で検証します。感覚論ではなく、計算で判断してください。
⚠️ 免責事項:本記事は情報提供を目的としており、税務アドバイスではありません。具体的な節税の判断は必ず税理士にご相談ください。
まず「医師の税率」を正確に把握する
節税効果を計算するには、まず自分の税率を知ることが先決です。
日本の所得税は累進課税制度です。収入が高いほど税率が上がります。
所得税率の早見表(2026年現在):
| 課税所得 | 所得税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 195万円以下 | 5% | 0円 |
| 195万〜330万円 | 10% | 97,500円 |
| 330万〜695万円 | 20% | 427,500円 |
| 695万〜900万円 | 23% | 636,000円 |
| 900万〜1,800万円 | 33% | 1,536,000円 |
| 1,800万〜4,000万円 | 40% | 2,796,000円 |
| 4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
さらに住民税10%が加わるため、実質的な税負担率(所得税+住民税)は以下のようになります。
| 年収の目安 | 実質税率(所得税+住民税) |
|---|---|
| 研修医(〜500万円) | 約20〜30% |
| 専攻医・後期研修医(500〜1,000万円) | 約30〜40% |
| 専門医・指導医(1,000〜2,000万円) | 約43〜50% |
| 開業医(2,000万円〜) | 約50〜55% |
重要なのは税率の高さです。 税率43%の医師が100万円の節税をすれば、43万円の税負担が減ります。同じ節税でも、税率20%の人の節税額は20万円。医師の節税効果が「桁違い」と言われる理由はここにあります。
不動産投資の節税の仕組み:2つの柱
不動産投資の節税には主に2つの仕組みがあります。
柱①:減価償却費による所得圧縮
建物は時間とともに価値が下がるという考え方から、建物の取得費を毎年少しずつ「経費」として計上できます。これが減価償却です。
ポイントは「現金が出ていかないのに経費になる」ことです。
土地は減価償却できません。建物部分のみが対象で、構造によって償却期間(耐用年数)が異なります。
| 構造 | 法定耐用年数 | 償却率(定額法) |
|---|---|---|
| 木造 | 22年 | 0.046 |
| 軽量鉄骨 | 27年 | 0.038 |
| 重量鉄骨 | 34年 | 0.030 |
| RC造(鉄筋コンクリート) | 47年 | 0.022 |
具体的な計算例:
物件価格:3,000万円
うち土地:1,200万円
うち建物:1,800万円(RC造)
年間減価償却費 = 1,800万円 × 0.022 = 39.6万円/年
この39.6万円が毎年「経費」として計上でき、課税所得を圧縮します。
節税額の計算:
税率43%(専門医・年収1,200万円の場合)
節税額 = 39.6万円 × 43% = 約17万円/年
毎年17万円の節税が、現金支出ゼロで得られます。
柱②:損益通算による給与所得の圧縮
不動産所得(家賃収入−経費)が赤字になった場合、給与所得と合算して税金を計算できます(損益通算)。
給与所得:1,200万円
不動産所得:▲100万円(赤字)
↓
合算後の課税所得:1,100万円
これにより給与所得に対する税金が減ります。
ただし注意が必要です。 不動産所得が赤字になるということは、実際にお金が出ていっているケース(実際の赤字)と、減価償却費だけで帳簿上の赤字になるケース(会計上の赤字)の2種類があります。
後者(会計上の赤字)が理想的な節税の形です。実際のキャッシュフローはプラスなのに、帳簿上は赤字になるため節税できる——これが不動産投資の節税の醍醐味です。
合わせて確定申告に関する記事も参照にしてください!

実際にいくら節税できるのか?具体例で計算
ケース①:研修医(年収450万円)の場合
【前提条件】
年収:450万円(給与所得控除後の課税所得:約290万円)
実質税率(所得税+住民税):約25%
物件:RC造・1,800万円(建物部分1,000万円)
年間減価償却費:1,000万円 × 0.022 = 22万円
家賃収入:月6万円(年間72万円)
管理費等経費:年間20万円
不動産所得:72万円 − 20万円 − 22万円(減価償却)= 30万円(黒字)
→ 節税効果:この段階では節税より収入が発生する形
→ 不動産所得30万円 × 25% = 7.5万円の追加税負担
研修医の場合の結論
課税所得が低いため節税効果は限定的。むしろ不動産所得が加わることで税負担が増えることも。節税より「収益を得ること」が目的になります。
ケース②:専門医(年収1,500万円)の場合
【前提条件】
年収:1,500万円(課税所得:約1,050万円)
実質税率(所得税+住民税):約43%
物件:RC造・5,000万円(建物部分3,000万円)
年間減価償却費:3,000万円 × 0.022 = 66万円
家賃収入:月15万円(年間180万円)
管理費等経費:年間50万円
不動産所得:180万円 − 50万円 − 66万円(減価償却)= 64万円(黒字)
→ 不動産所得64万円 × 43% = 約27.5万円の追加税負担
黒字の場合は節税どころか税負担が増えます。節税効果を出すには減価償却費をさらに大きくするか、経費を増やす必要があります。
【節税が発生するケース】
築古の木造物件(耐用年数22年・残存耐用年数が短い場合)
物件価格:2,000万円(建物部分1,500万円・残存耐用年数5年)
年間減価償却費:1,500万円 ÷ 5年 = 300万円
家賃収入:年間120万円
管理費等経費:年間30万円
不動産所得:120万円 − 30万円 − 300万円 = ▲210万円(赤字)
損益通算:
課税所得1,050万円 − 210万円 = 840万円
節税額:210万円 × 43% ≈ 90万円/年
これが「節税目的の不動産投資」の典型的な形です。ただし、ここに大きなリスクが潜んでいます。
「節税になる」という営業トークの罠
罠①:減価償却が終わると黒字転換する
上記の木造築古物件で節税できるのは、残存耐用年数の5年間だけです。
1〜5年目:減価償却費300万円/年 → 節税額90万円/年
6年目以降:減価償却費0円 → 黒字転換 → 税負担が増える
節税効果が消えたタイミングで売却しようとすると、今度は売却益に対して税金がかかります。
罠②:売却時に「税金の先送り」が発覚する
減価償却をした分だけ、物件の「帳簿上の価値(簿価)」が下がります。
購入価格:2,000万円
5年間の減価償却累計:1,500万円
5年後の簿価:2,000万円 − 1,500万円 = 500万円
5年後に2,000万円で売却した場合:
売却益 = 2,000万円 − 500万円 = 1,500万円(課税対象)
節税で浮いた450万円(90万円×5年)に対して、売却時に1,500万円が課税対象になります。不動産の売却益に対する税率は、保有5年以下で約39%(短期譲渡所得)、5年超で約20%(長期譲渡所得)です。
つまり節税は「税金の先送り」に過ぎないケースがほとんどなのです。
減価償却による節税は今の症状(税負担)を一時的に抑えているだけで、根本的な解決にはなっていない。
長期的な「出口戦略」まで含めて設計しないと、後で大きな税負担に直面します。
医師が不動産投資で「正しく節税する」ための考え方
節税を正しく活用するための原則を3つまとめます。
原則①:節税は「副産物」として捉える
節税を目的に赤字物件を買うのは本末転倒です。まずキャッシュフローがプラスになる物件を選び、その上で節税効果が生まれるなら活用する——この順番が正解です。
正しい考え方:
良い物件を選ぶ → 結果として節税効果もある → 一石二鳥
間違った考え方:
節税になるから → 赤字物件でも買う → 長期的に損する
原則②:出口戦略(売却時の税金)まで計算する
節税効果の計算をするときは、必ず売却時の税負担まで含めて「トータルの収支」を計算してください。
トータル収支の計算式:
(毎年の節税額 × 保有年数)
− 売却時の譲渡税
+ 保有期間中のキャッシュフロー累計
− 購入・売却にかかった諸費用
= 真の収益
この計算をChatGPTに任せることもできます。詳しくは「ChatGPTで不動産投資の収支シミュレーションをやってみた」の記事をご覧ください。
原則③:必ず税理士に相談する
不動産投資の税務は複雑です。減価償却の方法・青色申告・法人化のタイミングなど、個人の状況によって最適な戦略が異なります。
特に医師は給与所得・副業収入・不動産所得が絡み合うため、不動産投資に詳しい税理士への相談が必須です。「節税になると言われた物件を買う前に税理士に確認する」を鉄則にしてください。
まとめ:節税の現実と正しい活用法
医師と不動産投資の節税について整理します。
- 節税の仕組み:減価償却費による所得圧縮・損益通算の2本柱
- 医師の優位性:税率が高いほど節税額が大きくなる構造がある
- 研修医への注意:課税所得が低い段階では節税より収入確保が先決
- 節税の落とし穴:減価償却終了後の黒字転換・売却時の譲渡税
- 正しい活用法:節税は副産物・出口まで計算・税理士に相談
「節税になる」という言葉に飛びつく前に、この記事で解説した計算を自分で試してみてください。数字を見れば、本当に節税になるのか・どのくらい節税になるのかが明確になります。
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よくある質問(FAQ)
本記事はAI不動産ラボ(Dr.ぽち)が執筆しています。掲載情報は2026年5月時点のものです。税務・投資の判断は必ず専門家にご相談ください。本記事の計算はあくまで概算であり、個人の状況によって異なります。

